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  • 執筆者の写真Shigeru Kondo

研究の極意は、ボケと突っ込みの大阪漫才にある

更新日:2018年5月3日

おもろい研究のススメ 

阪大生命機能研究科が目指しているのは「おもろい研究」です。これを聞くと、「大阪のイメージにひっかけて、笑いを取ろうとしてるんだろう」と誤解される方が稀にいますが、そうではありません。研究科のメンバーは(少なくとも私は)、おもろい研究こそがすばらしいと確信して、日々研究に邁進しているのです。ではなぜ、「役に立つ」や「重要な」ではなく「おもろい」が大事なのか。それをわかって戴くには「おもろい」の本質を説明する必要があり、それにはやはり、大阪文化の象徴である「漫才」を例にするのがわかりやすいでしょう。


 漫才は、「2人組で披露される会話による演芸」(wikipediaの定義を要約)ですが、「ボケ・突っ込み」の掛け合いにその特徴があります。どんなに興味深い話題でも、それを普通に話して、普通に答えていたら、話芸になりません。ですから、ボケ役は、通常の会話からは出てこない想定外の返答(ボケ)により、会話を混乱させる必要があるのです。もちろん、単に想定外なだけではだめで、「なるほど、そんな見方もあるのか!」と観客が納得する説得力も必要であり、この意外性と説得力のバランスが漫才師の腕の見せ所です。一方、ボケによって飛び跳ねた会話を、通常の価値観に引き戻すのが突っ込みの役目です。会話の混乱が解消され、お客が安心することで、笑いが生まれます。また、一般常識に着地しておくことは、次にボケるために必須の条件でもあります。うまくできた漫才では、突っ込みによるボケの解消が、次のボケの布石となることで、話はどんどん膨らんでいき、ついには爆笑の渦を生みだすのです。

 研究の面白さは、これとよく似ています。漫才におけるボケと同じで、常識的なテーマを、通常の手法で解析しろと言われても、モチベーションが湧きません。やる気を出すためには、自分自身の疑問・仮説、あるいは夢が必要です。それが、これまでの研究の常識からは容易に出てこない、すなわち、「想定外」の物であるほど楽しい。もちろん、単なる妄想では話になりません。「きっと実現する」という期待が持てることが必要です。

 突っ込みに対応するのは、実験による証明です。実証することで、空想でしかなかったアイデアが現実の世界に着地し、新たな事実として認識される。世界中の論文の読者は吃驚してくれます。さらに、問題の解決は次なる疑問を生みだし、研究がどんどん膨らんでいけば、生命科学に革命が起きるかもしれません。どうです、ワクワクしませんか?

 要するに、「おもろい研究」とは、研究者の自由な発想・価値観に主導される研究のことなのです。研究における最大の価値はオリジナリティですから、「おもろさ」を追求することが、逆に「役に立つ」・「重要な」につながる最短の道なのですが、そのような価値観はとりあえず横においておきましょう。「おもろい」を追求したい研究者が集まり、切磋琢磨すれば、何かが生まれるはずであり、阪大生命機能研究科は、それができる自由な環境を可能な限り提供したいと考えます。

 自分にとっての「おもろい」を追求したい研究者、学生の皆さん。ご連絡をお待ちしています。 大阪大学生命機能研究科のHPはこちら

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