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  • 執筆者の写真Shigeru Kondo

(3)幻の企画「大先生の顔でアートする」実現へ

注:2013年の分子生物学会に関する記事ですので、お間違えの無いように




内容

この企画は、年会アート企画の一つとして行う。

分子生物学分野の著名研究者の顔写真をアート企画室に展示し、傍にマジックペンを置いておく。見学者は、マジックペンでひげなどのいたずら書きをしても良い。3日間展示したあとで、最終日の2050年シンポジウムの後(15時頃、)に、大御所のポートレートがどのようなアートに生まれ変わったかを、最終日イベントで鑑賞する。


趣旨

一見、とんでもないふざけた企画に見えるが、背後に、研究不正を呼びやすい昨今のラボ環境を是正する意図がある。


近年の研究環境では、ラボの大きさが拡大し、1人のPIが非常に大人数の研究員を使って仕事をすることが増えてきた。そのため、PIと研究員のコミュニケーションが希薄になり、また、雇うもの雇われるもの、というヒエラルキー強く意識される場合もある。研究不正の調査結果をもれ聞くところでは、そのような環境で上からのプレッシャーに逆らえずやらされてしまった例も多いらしい。何らかの改善策が必要であるが、「もっとフランクに話し合う機会を持つように」のような通達を出したところで、効果は全く期待できない。


私(近藤)はバーゼル大Walter Gehring教授の下でPDをした経験があるが、そこでは、研究に対する議論が行われる時には、ヒエラルキーを感じるような様子はなく、大きな業績を挙げた研究者に対する尊敬の念はちゃんと持ちつつも、大教授と学生の間でも、対等な関係で議論が行われていた。この雰囲気を象徴する出来事がある。研究所の記念パーティーがあった時に、学生の一人がGehring教授をネタにしたポスターを作った。その頃、研究所内では、オスがメスを追いまわすショウジョウバエの突然変異(horny fly: hornyは性欲過多の意)が話題になっており、ポスターではhorny professor と題し、Gehring教授そっくりの裸の変態男が、非常に見事に描かれていた。当然、それを見た研究員は大笑いである。


Gehring教授も、怒るどころかその似顔絵を非常に気に入り、長らく教授室に飾っていた。日本では(特に医学部では)考えられないことだが、人間としてのヒエラルキーをあまり感じない社会と言うものに、感心した記憶がある。こうした関係があれば、研究不正を強要されるようなことはあり得ない。


この雰囲気を少しでも持ち込めないかと考える。分子生物学で非常に大きな業績を挙げた研究者の顔写真を展示し、それにいたずら書きをしても良いとしておく。おそらく、ちょび髭を描かれたり、アッカンベーになっていたり、色々といじられるはず。だが、同時に学生等は、非常に高名な研究者が、そのような遊びにも協力するほどフランクであることを印象づけられる。自分のラボの教授に気後れしていた学生も、その必要が無いことを感覚的に解るはずである。また、ラボの中で強権的にふるまっているようなPIがそれを見れば、自分の日頃の態度を改めるのではないだろうか、と期待する。

この企画を実現するには、誰もが認める傑出した業績を挙げた分子生物学者の協力を得る必要がある。そんなバカなおふざけに協力する人はいるはずがない、とお思いかもしれないが、実際お願いしてみたら全員OKであった。さすがに大物は違うと感動した次第です。

既に御協力の承諾を頂いている先生

審良静男、大隅良典、近藤孝男、長田重一、中西重忠、本庶佑、山中伸弥(あいうえお順、敬称略)

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